まだそんなに大きくなっていない
自分のお腹をなでてみた。
まだ、ほんの小さな種のような
私の赤ちゃん。
男の子か、女の子かも
分からない。
どちらでもいい。
絶対に可愛いと思う。
だって、あの刀馬くんの
遺伝子を受け継いだ赤ちゃんだ。
きっと彼によく似た
綺麗な顔立ちの赤ちゃんが
生まれるはずだ。
そして、そんな彼の子供が
彼に愛された私の中から
飛び出してくるのだ。
想像しただけで
どきどきする。

妊娠しているという事実は
母だった女にも伝えられた。
女は、私をゴミを見るような目で
見下しただけだった。
それから、女は家には帰ってきていない。
どこかへ行ってしまった。
でも、私は何となく感じた。
あの汚い男の子供を宿すため
彼のところに行ったのだろう……と。

その代わり、家政婦さんが今まで以上に
私の世話をしてくれるようになった。

「何か辛いことはない?」

母だった女よりもずっと
他人の家政婦さんの方が
私にとっての母だった。

でも、そんな家政婦さんは
私に会うたびに必ず
こう言ってくる。

「早く、病院に行きましょう」

それは、赤ちゃんを殺せと
同じ意味だ。

「相手の男の子にもちゃんと
同意書もらえれば、今ならすぐ終わるわ」

家政婦さんはまだ知らない。
私が、刀馬くんの子供を
本当に産みたいと思っていることを。
だけど、刀馬くんと私は
父親が同じきょうだいかもしれないと
いうことを。