それからの私の記憶は
ほとんどない。
気がつけば
私は真っ白な病室にいた。
母ではなく
家政婦さんが
私を迎えに来た。
家政婦さんが
母だと名乗った。
それから、お医者さんから
質問をいくつかされた。

その中に、何故か
こんな質問があった。

「最近、性交渉はあったか」
「身に覚えがあるか」

と。
家政婦さんがいる前で
恥ずかしいと思った。
だから私は
黙り込んでいた。

するとお医者さんが
家政婦さんにこう言った。

「娘さんは、
おそらく妊娠しています」

その言葉を聞いた
家政婦さんは
顔を真っ青にして
壁に寄りかかった。

そして私はというと
女としての本能なのだろうか。
妊娠という言葉を聞いてすぐ
お腹を抱えたくなった。
守りたくなった。


赤ちゃん。
刀馬くんとの赤ちゃんが
できた。
嬉しい。
産みたい。
育てたい。

でも……。