「嘘……嘘!嘘!嘘!!」

嫌だ。
信じたくない。
刀馬くんと私が
父親が同じということは。
私たちはきょうだいということに
なってしまう。
そして、この日本では
きょうだいは結婚できない。
民法というもので
そう決められている。
だから
きょうだいの恋愛を
描いている漫画には
禁断の文字が並ぶ。

私が読んだことがある
それらの漫画は
決してハッピーエンドには
ならなかった。

「嫌だ……」

私と刀馬くんは
普通の出会いだった。
通ってる予備校で
話しかけられて
話して
好きになって
手を繋いで
セックスをして
また好きになった。

普通だ。
どこに、悲恋の要素がある?
ありふれた出会い。
ありふれた想い。
私と刀馬くんも
そんな普通のカップルだ。
街中に溶け込んだなら
きっと誰にも存在を気づかれない。
でも、お互いだけが
お互いのことをちゃんと見つけていられる。

そんな、普通の恋人同士。
それが、私と刀馬くんだった。
はずだったのに。

「いやああああああ!!!!」

私は、男を突き飛ばして
スマホ以外何も持たず
家を飛び出した。