やばい。
逃げようと思った。
見ていることがバレたら
何と思われるんだろう。

でも、逃げられなかった。
男は、じっと私の目を見て
ニヤリと笑った。
その瞬間、男は
私がここにいることがわかっていて
わざと続けていたということに
気づいた。

けれど、そんなことよりずっと
気付きたくない事実が
その顔に隠れていた。

「刀馬……くん……?」

髭は生えている。
お腹もだらしがない。
髪もぼさぼさで汚い。
だけど、目と鼻と口元が
刀馬くんとそっくりだった。