今、何と言った……?
私は、聞き間違えたのだろうか。
母が、子供を産んだと?
誰の?

「んっ……あなたに似た……
素敵な男の子が
生みたいの」
「あの子……羽奏ちゃんだっけ?」

どうして、あの男の人が
私の名前を知っているの?

「あの子も十分
素敵じゃないか。
あの子だけじゃ
物足りないの?」

あの人は一体
何を言っているのだろう?

「だって、あの子……
ちっともあなたの顔に
似ないんだもん」
「可愛いじゃないか
君にそっくりだよ」
「だからよ。醜すぎて
顔を合わせたくないもの」
「そんな悪いことを言う子には
お仕置きをしないといけないね」

聞こえてくるベッドの軋みが
より激しくなった。

「君が、僕の子供が欲しいって言うから
僕の精子をこうしてあげてるんじゃないか」
「だって……あなたが好きなんですもの」
「ああ、嬉しいよ。
例え僕が君を愛さないと知っていても
君は僕の夢を叶えてくれるのだから」
「ええ、あなたがこうして……
くれるなら……いくらだって
私をあなたに捧げる……
だからお願い……今度こそ
あなたにそっくりな男の子を
私にちょうだい……!」

ああ。
吐きそうだ。
風呂場に行くには
きっと母の部屋の前を通らなくてはいけない。
だけどもう、おさえられない。