それから私は
前と同じように
彼に手を引かれながら
あの冷たくて寂しい家までの道のりを
一歩、また一歩と進んでいる。

その間、彼と私は
言葉を一切交わさなかった。

私の理由は簡単。
あんなことがあって
彼に自分からどう声をかけていいか
分からなかったから。

でも彼の理由はわからない。
暗闇のせいで、顔も見えない。
だから、手から伝わる
彼の体温からしか
彼のことが今は分からない。

そしてそんな彼の手は……
やっぱりとても熱かった。


熱いといえば。


玄関で、彼の母親に見送られた時
耳元でこっそり

「赤ちゃんができたら、必ず教えて」

と言われてしまった。
だから、今私の顔には
触れてほしくないと思った。
絶対火傷するほどの熱を
持っているだろうから。