「この人は誰?」

彼が聞いた。

「精子バンクに登録していた人よ」
「それって……普通匿名なんじゃ……」

彼は、精子バンクというものを
少しは知っていたのだろうか。

「普通はそうね。
でも、私たちはどうしても
あなたをくれた人を知りたくて
探したの」
「ああ。お前がいつでも
会いたい時に会えるようにな」

それを聞いた時
私は、どこまでこの二人は
刀馬くんのことを
考えているんだろう……と
思った。

でも、刀馬くんにとっては
違ったみたい。

「何だよそれ……
急にそんなこと言われても
意味わかんないよ……」

そう言うと
刀馬くんは急に立ち上がって
出て行ってしまった。

「刀馬くん!」

私も、急いで彼を追いかけようとした。

「羽奏ちゃん」

部屋を出る時、彼の母親は
私に声をかけてきた。

「あの子のこと……
任せてもいいかしら」

と頼られた。
私は条件反射で頷いてから
彼が向かった二階へと走った。