「実はね、刀馬はパパの子供じゃないの」

彼の母親の告白は
出だしからとても重かった。
ほんとに私が聞いちゃっていいのかな……
と、躊躇う気持ちと
刀馬くん、大丈夫かな……
という心配する気持ちが一気に押し寄せた。
刀馬くんの顔色は
なんだか少し悪い気がした。

「それは……」

彼は、言葉に詰まっていた。
それだけで
彼のショックが伝わってくる。
ああ、この人は
お父さんのことが大好きだったんだなと
少し羨ましくもなった。

もしも私が
母親と血が繋がっていないと言われても
私は彼みたいにはならないだろう。
ふーんで、終わらせたかもしれない。

「どういうこと?」

ようやく、彼は聞きたいことを
聞くことができたようだ。
そして、彼の言葉を待ってから
今度は彼の父親が口を開いた。

「父さん、過去にちょっと病気してな。
精子がほとんどないらしいんだ」

え、そんなことあるの?
セックスとかどうしてるんだろう?
白い種が出てこないってこと?

「母さんも、それを知っててくれて
結婚してくれたんだが……
母さんの親御さんがな……
そんな俺との結婚に
反対して……」

母さんの親御さん。
普通にお義母さんと
言えない関係性だということも
分かった。

「母さんはそれでもいいと
言ってくれたんだけどな」
「ええ。あなたと夫婦になることが
何より大切だったのよ」
「でも、母さんは
本当は自分の子供
育てたかったんだ。
母さんの文集には
素敵なお母さんになりたいと
書いてあったほどだし」

なるほど。
彼の母親という人は
私の母親なんかよりもずっと
子供を育てる才能が
あったのかもしれない。
だから、彼のような
素晴らしい男の子を
育てることができたのか。

妙に納得した。

「それで、この話は
俺から提案して……
最初母さんは絶対嫌だと
言ったんだけど……」
「そうよ。
あなた以外の精子を
体に入れるなんて……
冗談じゃないと思ったわ」
「父さん……母さん……
それってまさか……」

彼が、青ざめた顔で
自分の仮説を確認するかのように
聞いた。

「ああ、そうだ。
お前は、俺以外の精子を
使った人工授精で
産まれた子供だよ」