「そうだわ、羽奏ちゃん」
「は、はい!」

急に、彼の母から
名前……それも
ちゃん付けで呼ばれた。
びっくりしすぎて
心臓が口から出るかと思った。

「羽奏ちゃんもどう?」
「……はい?」

どう、と言われても。
何に対して答えれば良いのか
さっぱり分からない。

「母さん、言葉が足りないから彼女困ってるよ」

彼が察してくれた。
そんな些細なことで
また彼にときめく私。

「あらそうなの?」
「そうだよ。でさ、羽奏。夜大丈夫?」
「え!?」

彼の口から夜のことを聞かれると
私たち2人の秘密の時間と
繋がってしまうので
顔が熱くなってしまう。

「な、何が?」

意識をしてしまったせいで
声が裏返ってしまう。
変に思われてないだろうか?
彼はくすっと笑ったので
きっと気づいてしまったのだろう。
後で何か言われるかもしれない……。

「ここで、一緒にすき焼き
食べていかないかってさ」
「……え?」

私が彼の母親と父親を見ると
2人とも、うんうんと
大きく頷いていた。