「と、父さん?」

なんと。
ゴリラのおじさんの正体は
彼のお父さんだったらしい。

「どうして、この時間に……」

彼が尋ねると
ぎろりと私が睨みつけられた。
こ、怖い……。

「私がお知らせしたのよ」
「母さん!?何を言ったの」
「刀馬が、可愛い女の子連れてきたのよって」

えっ……?
私と目が合うと
彼の母親が
似合わないウインクをして
微笑んできた。

「何勝手なことしてるんだよ!」
「あら、報告するのは当然でしょ?」
「なんでだよ!」
「可愛い息子が、初めて女の子を連れてきたんですもの」

その言葉に
彼の父親だというゴリラのおじさんも
こくりと頷き親指を立てた。

「息子のために、部下に仕事押し付けてきた」
「それ絶対やっちゃだめだから」

びっくりした。
あんなに優しくて
王子様みたいな彼が
こんな風に顔を真っ赤にして
大人の人にツッコミするなんて
全く知らなかったから。

「羽奏、ごめん……」
「え?」
「うち……ちょっとおかしいから……」

彼がそう言った時だった。
私の目の前で
彼の母親と父親が
思いっきりキスしていたのは。