声が漏れないように
私が息を潜めていると
扉が急に開いた。

「羽奏」

彼の声がしたので
安心して布団から
顔だけ出してみた。

「羽奏、ごめんね」
「ううん、それより大丈夫そう?」
「それなんだけど……」

彼は、扉を閉めてから
私にそっと近づいてきた。

「母親に、バレてるみたいなんだ」
「……え?」
「羽奏……というか、彼女がいること……」
「嘘……どうして……」
「靴、玄関にそのままにしてたから……」
「あ……そっか……」

全く考えもしなかった。
他人の靴が玄関にあることなんて
私の家では普通すぎるから。

「それでさ、羽奏」
「うん」
「母親がさ……羽奏に、会いたがってるんだ」
「え!?」