彼が、私の服の上から胸を触った時だった。

「刀馬ー?帰ってるのー?」

ドア越しに、彼を呼ぶ声が聞こえた。

「まずい……母さんが帰ってきた……」
「えっ!?」

まだ、夕方になったばかり。
彼のお父さんとお母さんは
二人とも働いているから
こんなに早く帰ってくることはないと
彼から聞いていたのに。

「ちょっと、ここに隠れてて」

彼は急いで自分の服を整えると
私の額にキスをしてから
彼の布団の中に私を隠した。

「うん、いるよー。どうしたの母さん」

と、普段は彼の口から聞くことがない
母さん、と呼ぶ彼の声が
扉を閉める音と同時に聞こえてきて
胸がきゅんっとなった。

私の心臓の音が
ドアの向こうにも
聴こえるんじゃないかってくらい
大きくなっていく。

私は気を紛らわせるために
深呼吸してみる。

私が大好きな彼の匂いが
体いっぱいに入り込む。

体内からどろっと
彼を求める蜜が落ちそうになるのが
分かった。