「どうした?羽奏?」
「え?」
「具合……悪くなった?顔色、すごく悪いから」

何て……言えばいいんだろう。

気持ち悪い。
吐きそう。

でもそれは、風邪とかじゃない。
だって、さっきまで
すっごく幸せな気持ちだったから。

「ごめん、刀馬くん……先に行ってて」
「なんで?」
「ちょっと、用事思い出しちゃって」

そして私は、逃げ出してしまった。
刀馬くんから。
そして母親から。

だって、説明できる気がしなかった。
私がどんな気持ちで今立っているかなんて。
私だって、よくわかってないから。

ただ、刀馬くんに……
今の私を見て欲しくないと
思ってしまった……。

それなのに。

「待って羽奏」

彼は、私を追いかけてきた。

「放っておけないよ」

私の手を掴んでくれた。

「刀馬くん……」

私は、街中なのに
彼に抱きついて泣いてしまった。
なんで涙が出るのか
その答えを知るのは
もう少し後のこと。