それは、私と彼が
いつものように学校帰りに待ち合わせて
街中を歩いている時だった。
まだ今日は、手を繋ぐだけ。
キスすらできていなくて
体の奥底で物足りなさを感じていた。

予備校まで、まだ時間がある。
でも……繋がるには
ほんの少し時間が足りない。

だから私たちは
手を繋ぎながら
街をブラブラしながら
時間を潰していた。

「羽奏、どっか入ろうか?」
「うん」

私たちは、適当に近くにあった
ファーストフード店に入ろうとした。
でも、私はその入口を見てすぐに

「ごめん、ここじゃない方が……」

と、彼に言ってしまった。

「どうしたの?」

彼は心配して聞いてくれたが
なんて説明していいのかわからなかった。

まさか、いるはずのない自分の母親がそこにいて
知らない男と親しげに話をしているのを見て
怖くなった……なんて。