「今、何してる?」

部屋のベッドに潜っている時間
私には何もなかった。
でも、今は違う。
彼が、ベッドの中でも話してくれる。
彼の声が、布団の中に響いて、心地いい。

「ベッドにいるよ」
「俺もだよ」
「そうなんだ」

彼が今いるベッドは
さっきまで、私と彼が1つになった場所。
急にまた、体が熱くなった。

「羽奏、顔見たい」
「え、やだ」

もう、顔を洗って、まゆげもない。
こんな顔を私以外の人に見せるなんて
もう何年もなかったから。

「お願い、羽奏の顔見てから寝たい」
「…………どうしようかな…………」

こうして、彼が私の顔を見たいと言ってくれるのは
とっても嬉しい。
こんなに求めてもらえたことなんて、なかった。
だから……

「ちょっとだけだよ」

1度カメラの自撮り機能を使って
いい感じの角度を見つけてから

「じゃあ、ビデオ通話にするね」

と私から切り替えた。
急にスマホの中に現れた、
彼の顔を見た瞬間、
さっきのベッドの上の彼を思い出してしまった。