「あ……ごめん……俺だ……」

彼は、私から少し離れてから、スマホを操作した。

「ああ……親父からか」
「お父さん?」
「予備校にいるなら迎えに行くって……ちょっと待って、すぐに返事しちゃうから」

彼が、慣れた手つきで

【すぐ帰る】

と、フリック入力しているのが、見えた。

そっか。
夢の時間はもう終わりなんだ……。

「刀馬くん」
「ん?」
「今日は、ありがとう。帰るね」

私は、彼が何かを言う前に
私からおしまいを告げた。

きっと、彼から言われたら……
寂しくて泣いてしまいそうだったから。

「じゃあね」

私は、駆け足でこの場から立ち去ろうとした。