「えっ!?私知らない!」

本気で驚いた。
私たちの初対面は、あの自習室だと思っていたから。

「そりゃそうだよ。だって……」

そう言うと、彼はじっと、私の目を見つめてきた。

「なっ……何……?」

彼の目の中に、顔を真っ赤にした私が映っていて、ますます恥ずかしくなった。
でも、目を逸らしたくなかった。

もっと、見つめてもらいたい。
私も、見つめられたい。

「こんな風に、見てたんだよ。いちごジャムのコッペパンを」

「……え?」

確かに、私はいちごジャムのコッペパンが大好物だ。
でも、コンビニというところのすごいところは
美味しそうな新商品が、毎週出てくるところ。
そのたびに、どちらを買うか悩んでしまうのだ。

「俺なら、両方買うのに、どうしてあんなに悩むんだろうって思ったよ」
「……2つなんて食べられないよ」
「どうして」
「……だって……太るもん……」

夕飯代としては毎日500円支給されている。
だからパン2つに、飲み物1本で予算はクリア。
だけど、私だってお年頃だ。
体重計とは毎日睨めっこ。
ニキビだって気になる。

……だったら野菜を食べればいいという話ではない。
パンは食べたい。
勉強をがんばるエネルギーになるから。
だから、1個にする。
とっておきの、1個。

「特に、面白かった日が……」
「え?」
「コッペパンを諦めて、別のもの買おうと1度レジで会計してるのにさ、
『すみません!やっぱりやめます!』
って言って、コッペパン取りに行った時は……笑いこらえるのが大変だったよ」

ちょ、ちょっと待って……。
もしかして刀馬くん……何度もそんな私を見てたってこと!?