「何で、拗ねてるの?」

彼が聞いてくる。

「拗ねてない!」
「拗ねてる」

そう言った彼は、私のほっぺに触れながら

「そんな顔も可愛いけど……ねえ、教えて」

おねだりするような、彼の顔こそ、とっても可愛かった。

「…………だって……刀馬くんは私よりもずっと……モテるから」
「……え?」
「だって!予備校で女の子たち、いっつも刀馬くんのこと見てるもん……!」

私も、刀馬くんとキスして……
あんな恥ずかしいことをする関係にならなかったら
そういう女の子たちと一緒に
眺めていたかもしれない。

その女の子の中には
いつもランキング入りするくらい頭の良い子もいるし
可愛い制服で有名なお嬢様学校に通う子もいる。

そんな女の子たちを差し置いて
自分が選ばれたのは、まさに奇跡。
奇跡すぎる。
一生分の奇跡を使い果たした。

「なんだ……そういうこと?」

刀馬くんは、はははと笑った。

「何で笑うの!?」
「ごめん、おかしくって」

何がおかしいというのだろう。
私が反論しようとすると
刀馬くんは、私にちゅっとキスしてきた。
一瞬だけの軽いもの。