「お前、まだ大学生だろ?
こんな店で彼氏に指輪ねだってんのか?」

やめて。

「ってお前……まさか
妊娠しちゃってるわけ?」

やめて、やめて。

「随分と、早熟なんだな。
お前の母親から
イイ教育でも受けたのかな?」

やめてやめてやめて!!

「ねえ、どうしたの?真司?」

全く聞いたことがない
甘ったるい猫の様な
女の声がした。
よく見ると、男の腕に
蛇の様に巻き付いている
化粧がきつい女がいた。

「ああ、いや。何でもない。
知り合いのガキで」

……え?

「そうなの?
なんだーよかった。
二股相手だったら
殺してやろうかと
思っちゃった」
「おいおい、やめてくれよ。
今はお前だけなんだから」
「やだーもう!真司ったら!」

何を言ってるの?
知り合いのガキ?
じゃあ……。

「嘘だったんですか……?
私が、あなたの子供だと言うのは」
「はあ!?真司くんに
あんたみたいなでっかい
子供いるはずないじゃん」
「ちょっ、やめろこんなところで」

男は、私の口を塞ごうとした。
でも、それはできなかった。

「俺の妻に何してるんですか?」

刀馬くんが
男の手を掴んで
床に叩きつけてくれたから。

でも、出てくるタイミングが
とても悪かった。
できれば、2人は並んで欲しくなかった。


「おまえ……刀馬か……?」
「は?どちらさまですか?」


男と刀馬くん。
この2人は誰が見ても
明らかに親子だと分かるほど
そっくりだった。