「会計行ってくるから、適当に見てて」
「分かった」

そう言われて私は
適当に店内を見て回った。

「かわいい……」

赤ちゃん用の
ベビーリングが
ディスプレイされてた。
もしも。
私にお金があったなら
買ってあげたかった。
ママからの
最初のプレゼントだよって
つけてあげたかった。

だけど、今の私には
そんな力はない。

「もう少しだけ
待っててね」

私は赤ちゃんに
言い聞かせる様に
左手でお腹を撫でた。

未練を断ち切る様に
隣のディスプレイを
見ようとした時だった。

「あれ？」

背後から
それが聞こえたのは
気のせいであって欲しかった。

「羽奏ちゃんだよな」

ねえ、どうして。
なんであの男の声が
こんな綺麗な空間に
響いているの？

「おい、どうしたんだよ
無視か？」

背中を叩かれたので
咄嗟に振り向いて
しまった。
そしてすぐに
後悔した。

「お、やっぱりそうか」

ねえ、どうして。
なんであの男の声を持つ男が
刀馬くんとそっくりな
綺麗な顔をしているの？