「遅くなってごめんね、羽奏」

私は、首を振った。

「俺の赤ちゃんを
産んでくれる君と
ちゃんと家族になりたい」

と彼は言った。
私の目からは
涙が溢れて
彼は照れ臭そうに
私の目元を
ハンカチで拭ってから
私の左手薬指に
指輪をはめてくれた。

「これ、どうしたの？」
「受験に受かってからすぐ
バイトした」

そういえば
受験の後しばらく
夜遅く帰ってきてた。
彼はとても
人気があったから
てっきり
色々なお誘いで
忙しいのかと思ってた。
そのせいで
八つ当たりしたこともあった。
彼はその時
何も言い訳してくれなかったけど
その理由が
これだったのなら……。

「ごめんね、刀馬くん」
「え？」
「刀馬くんばっかりずるいって言って」
「そんなこと言ったっけ」

彼は、笑って許してくれたけど
私の中には
罪悪感がますます
膨れ上がる。