それからは
あっという間だった。
刀馬くんの母親は
家政婦さんに
私が見たことのもない
分厚い札束を渡して
何かを耳打ちしていた。

家政婦さんは
ちらりと私の方を見てから
見たこともない速さで
会釈してきた。
それから私を振り返ることなく
どこかへと走ってしまった。

「何を話したんですか?」

私は聞いた。
刀馬くんの母親からは

「子供は気にしなくて良いのよ」

と言われた
もうすぐ母親になる私なのに。
母親になるからと言って
私が子供のままなのは
変わらないということなのだろうか。
少なくとも
この人にとっては。