「羽奏ちゃん、体はどこも辛くない」
「……はい……」
「そう、良かったわ。今はとても大事な時期だもの」
「ありがとうございます」
「やだわ、もう私たち、家族になるのよ。こう言う時は頼ってくれなきゃ、ね」
「家族……」
「そうよ。だって、あなたは私の孫を産んでくれるんでしょう?」

はいそうです。
私は、あなたが
人工授精で作った
男の子の種で作られた
子供がいます。
その男の子を作った種は
私の種と同じ男から
作られたんです。

言ってやりたかった。
ぶちまけたかった。
でも、言えなかった。
この女の人の
女神のような微笑みが
悪魔のように歪むのを
見たくなかったから。