それから私は、急に熱を出して1週間学校に行けなかった。

それだけなのに、仲良しの友達からは、たくさんメールをもらった。


大丈夫?

早く学校においで。


こんなに優しい言葉をかけてもらえるなんて思わなかった。

嬉しかった。

だから、アイツと離れたことは私にとって正解だったのだと、思い込もうとした。

熱がようやく下がって、久しぶりに登校できた日。

アイツに絶対会わないように、すごく早い時間に起きて、家を出た。


それなのに……。


「琴莉!」


真上から、声が降ってきた。

聞いただけで、顔が真っ赤になってしまうくらい、大好きな声。

私が恐る恐る見上げると、2階の窓からアイツが顔を出して私を見ていた。

だけど、私は後悔した。


「よお!熱下がったのか?」


声はアイツだけど、あの人は知らない人。

髪型が、私がよく見るアイドルと似ていた。

私が見た事なかった、着崩した制服姿。

私以外の女の子と、楽しく遊んでいるんだな……とすぐ分かった。



「ちょっと待ってろ、いいな」



アイツはそう言うと、すぐに窓からいなくなった。


知らない……あんな人……。


私は、私が知らない人になったアイツと話すのが怖くて、学校に向かって全速力で走った。