「波音君」


俺が一通りメモを読んだタイミングで、琴莉の父親が話しかけてきた。


「本来なら、娘の恋愛に親が口を出すべきじゃないと、私自身は思っている。だがね……今回は、流石に私も、黙っているわけにはいかない。どうしてか分かるか?」


ここでは、どう答えるのが正解なのだろう?

琴莉の父親が、俺に求めている答えが全くわからない。

そんなことを考えていると、琴莉の父親からはため息が漏れた。


「答えないということは、それが君の答えということでいいのかい?」

「違います!それは……」


反論しなくてはいけないと思った。

でも、何も言えなかった。

琴莉の父親は、しばらくの間、俺の回答を待ってくれていたようだが、再び深いため息をついてから


「君は……とてもいい子だと私は思っていた。現にこうして、琴莉の事故を聞いたから、こうして駆けつけてくれたのだろう?」

「はあ…………」


はい、と言いたかったけど、何故か言ってはいけない気がした。


「君を引き止めたのは、これについて聞きたかったからだ」