いつからだろう。

アイツの家に、毎朝たくさんの女の子たちが来るようになったのは。

今では当たり前になりすぎて、もう……よく覚えていない。

ただ、そのおかげで、私と同じように、アイツを特別だと考えている女の子はたくさんいることが分かった。


最初の頃は、気にせずアイツに話しかけていた。

アイツも、私にだけ名前で呼びかけていた。

他の女の子たちは苗字で呼んでいたから、ほんの少し特別な気持ちを味わっていた。


そんな私を、女の子たちは気に食わなかったのだろう。

小３になったばかりの時、私は体育館の裏に女の子たちに呼び出された。



「あんたなんか、ナオにふさわしくない！」

「生意気なんだよ、ブス！」


母親と見ていたドラマのようなセリフを、まさか自分が言われるなんて思わなくて、まず驚いた。


どうしてそんなことを言われないといけないんだ。


もし今の私だったら、そんな風に一言言えたかもしれない。


だけど、10人以上もの……それも、半分以上は年上の女の子たちに囲まれながらにらみつけられた私は、女の子たちが怖くて仕方がなかった。


その日以来、私はアイツに話しかけられても、逃げるしかできなくなっていた。