「君が、今誰を好きでもいいし、僕のことを彼氏と見られなくても今はいい。僕も卒業までは君を後輩として扱う。でも、僕の卒業式の日にもう1度告白させて欲しい」

「それって……」

「その時に、僕の気持ちを受け入れてくれたら……嬉しい……」


そう言って、この日は立川先輩も私を放送室に残して、教室へと帰っていった。

全国の女子を虜にしたイケメンボイスに、少女漫画に出てきそうなセリフを言われたのだ。

どきどきはした。

心臓の音が、太鼓のように響く。

それに、生まれて初めての告白だ。

しかも、私のような……地味で、誰にも気づいてもらえないような容姿の人間に。


嬉しくない、と言えば嘘になる。

ありがたい、と思った。

立川先輩のことは尊敬しているし、この人のようになりたくて、今私は練習を積み重ねているのだから。

私なんかを想ってくれる人がいるなら、その人の想いに応えたいと思うのは、人間として普通の感情じゃないかと、想った。

卒業式なんか待たずに、今からでも付き合いませんか?と言ってしまっても良かった。

そのはずなのに。


立川先輩は分かっていたのだろう。

今私の心にいる人が、どれだけの割合を占めているのか。

だって、こんなにもときめく展開があっても、私が今1番に考えているのは……。


「どうしてアイツじゃないんだろう」


だったから。