「君が好きなんだけど」

立川先輩にそう言われたのは、立川先輩が受験に合格してすぐの、冬になったばかりの頃。



この頃の私は、立川先輩が優勝した夏のコンクールから来る忘れられない感動と、立川先輩というエースが抜けてしまうという部の事情にもより、台本読みのトレーニングを本格的にするようになっていた。

私の声は低くも高くもない、つまらない声だったので、最初は興味はあっても、実際に原稿読みをすることは躊躇っていた。

だけど、受験の準備の合間に立川先輩がマンツーマンレッスンをしてくれたおかげで、一通り聞き取りやすい原稿読みまでは出来るようになっていた。

それから、立川先輩の受験が本格的になり、一時的にレッスンはお休みになっていたが、
その間も、私と立川先輩はラインで時々やりとりをしていた。

そんなことをしていても大丈夫なんだろうか、と心配したこともあったが、立川先輩の成績は私なんかが心配するなんておこがましい程良くて、あっさりと合格を手にして部に戻ってきた。

そんな矢先での出来事だった。

放送部で、いつものように放送の準備をしている時に、急に立川先輩
から


「話があるから残ってほしい」


と言われたのは。

私はてっきりレッスンの続きなのかな、くらいの軽い気持ちだった。

なので、田村先輩がいなくなった後、2人きりの放送室の中で告白されて、驚きしかなかった。


「あ、あの……」


私が、どう返事をしようか悩んでいると


「君が僕のことを好きじゃないのは知ってるよ」

「え?」

「君のことを好きになってもう半年以上も経てば、わかるんだよ、そういうのは」


と言われた。

けれど、先輩はここで話を止めてはくれなかった。