「あー松井くん、お盛んだねぇ」


一緒にメールを読んでいた田村先輩が、呆れたような声を出した。

私が知っている限り、ほとんどの女の子がナオ呼びしていたから、田村先輩のような美人な人がアイツを苗字呼びしているのが、とても新鮮だった。


「松井ガールズ、廊下を我が物顔で占領してて、ほんっと迷惑」

「ま、松井ガールズ……ですか??」

「そ、松井くんにベタベタアメーバのようにまとわりつく、頭の弱い子達のこと。私たちの間ではそう呼んでるのよ」


田村先輩の表情から、そのガールズ達がいかに先輩にとって迷惑な存在であるかが、ヒシヒシと読み取れた。


「あーもう、人前でベタベタイチャイチャ……松井くん、一体どういう神経してるのかしら」

「は、はあ……」


耳をできれば塞ぎたかった。

でも、田村先輩は知らない。

私とアイツの繋がりを。

だから、知らないフリをして、田村先輩の話を聞いていたが……。


「この間もさ松井くん、女2人を抱えてホテルに行ったらしいの」

「そんなこと、できるんですか?」


ラブホだとしたら、18歳未満は利用できない。

アイツはまだ17歳だ。


「それが、行ったホテルって、あの高級ホテルだったみたいなの。きっと、
女どもに貢がせてるか、いかがわしい仕事をしているに違いないわ」


それからも、田村先輩は立川先輩が来るまで、延々と、松井波音がいかに女狂いで遊び歩いている存在であるかを、私に教えてくれた。




田村先輩は知らないから。

目の前の人間が、一体どんな思いで松井波音と言う存在を、必死に忘れたがっていると言うことを。

アイツが私以外の女の人を抱いているかもしれないと言う情報が、どれだけ私の心を抉るのかを。