その日、お昼の放送が終わった後、私は機材の前でぼーっとしていた。
授業が始まるギリギリまで、教室に戻るのが嫌だったから。
「佐川さん、どうした?」
「立川先輩……お疲れ様です」
ブースから出てきたばかりの立川先輩の声は、少し枯れているようだった。
「今日使った曲は、僕達も初めて聞く曲ばかりだったけど」
「あ……実は……」
私は、ほぼ押し付けに近い形で渡された、クラスメイトのCDを見せながら事情を説明した。
「リクエストか……良いかもな」
「え?」
「今まで放送部では、放送する原稿のネタは募集していたけど、音楽は特にリクエストを受け付けてたわけじゃないんだ。そこまで、優先度は高くなかったし。でも……」
立川先輩は、私の頭をポンっと軽く叩くと
「誰かさんの、センスがいい音楽チョイスのおかげで、今や僕のクラスでもこのお昼の放送は評判になったんだよ。次はどんな曲が流れるんだろうってね」
私は、くすぐったい気持ちになったので、つい先ほど借りたCDをなぞってみた。
傷がついてなくて、安心した。
「よし、決めた」
「決めたって、何をですか?」
「ん、明日の放送で、呼びかけてみるよ。音楽のリクエスト」
「そんな簡単に決めていいんですか?田村先輩にも聞いたほうが……」
「ああ、あいつは即OKって言うだろうから大丈夫」
「そ、そんなもんですか……?」
立川先輩は、私の問いかけににっこりとメガネを直しながら微笑んだ。
「よし、リクエストはメールで受け付けるようにしよう。それから……」
立川先輩と私は、その後チャイムが鳴るまで作戦会議を続けた。
明日、どんな言葉でリクエストを募ろうか。
もらったリクエストを、どう使っていこうか。
まるでいたずらを仕掛けるかのように、ワクワクした。
つい数十分前に起きた、ショックな出来事で傷つけられた心が、少し和らいだ気がする。
今、この人と放送部があって良かった。
きっと、高校の間は登校拒否にならずに済むかもしれない。
アイツのせいで。
そんな、かすかな希望を抱いた。
授業が始まるギリギリまで、教室に戻るのが嫌だったから。
「佐川さん、どうした?」
「立川先輩……お疲れ様です」
ブースから出てきたばかりの立川先輩の声は、少し枯れているようだった。
「今日使った曲は、僕達も初めて聞く曲ばかりだったけど」
「あ……実は……」
私は、ほぼ押し付けに近い形で渡された、クラスメイトのCDを見せながら事情を説明した。
「リクエストか……良いかもな」
「え?」
「今まで放送部では、放送する原稿のネタは募集していたけど、音楽は特にリクエストを受け付けてたわけじゃないんだ。そこまで、優先度は高くなかったし。でも……」
立川先輩は、私の頭をポンっと軽く叩くと
「誰かさんの、センスがいい音楽チョイスのおかげで、今や僕のクラスでもこのお昼の放送は評判になったんだよ。次はどんな曲が流れるんだろうってね」
私は、くすぐったい気持ちになったので、つい先ほど借りたCDをなぞってみた。
傷がついてなくて、安心した。
「よし、決めた」
「決めたって、何をですか?」
「ん、明日の放送で、呼びかけてみるよ。音楽のリクエスト」
「そんな簡単に決めていいんですか?田村先輩にも聞いたほうが……」
「ああ、あいつは即OKって言うだろうから大丈夫」
「そ、そんなもんですか……?」
立川先輩は、私の問いかけににっこりとメガネを直しながら微笑んだ。
「よし、リクエストはメールで受け付けるようにしよう。それから……」
立川先輩と私は、その後チャイムが鳴るまで作戦会議を続けた。
明日、どんな言葉でリクエストを募ろうか。
もらったリクエストを、どう使っていこうか。
まるでいたずらを仕掛けるかのように、ワクワクした。
つい数十分前に起きた、ショックな出来事で傷つけられた心が、少し和らいだ気がする。
今、この人と放送部があって良かった。
きっと、高校の間は登校拒否にならずに済むかもしれない。
アイツのせいで。
そんな、かすかな希望を抱いた。