放送部に入って2週間くらいしてから。
昼休みに入ってすぐ、放送室に行くために教室を出ようとしたら、そんなに仲良くなかったクラスの子から声をかけられた。
「ねえねえ、佐川さん」
「何?」
「あのさ、昼の放送なんだけど……誰が曲、決めてるの?」
文句でもあるのだろうか……と少し怖くなったけれど、どうせ放送室を覗かれると私が機材を触っているのはバレてしまうので、素直に
「私……だけど……」
と返事をして、返事を待った。
早く行きたいなぁ……解放されたいなぁ……と思いながら。
すると、いきなり私の手をクラスメイトは両手で握りしめてきた。
かと思うと
「もうね、すっごい曲選び、天才かって」
「へ?」
「控えめに言って、エモい」
「え、えも……?」
「最初昼の放送聴いた時から、ピンっと来たんよ。流す順番、タイミング、そして音楽を切るタイミング……どこのプロ連れてきてるんだって」
「ぷ、プロでは……」
「ウチの部活でも今の放送話題になってるんよー」
「え?え?」
「3月までは、適当に選んだっぽい曲を、適当なタイミングで流す、超ど素人の放送だったのに、4月から垢抜けたって先輩たちも喜んでたんよ」
「は、はぁ……」
「あ、ちなみに、それでお願いなんだけどさ」
そういうと、その子は大量のCDを私に押し付けてきた。
今時、こんなCDなんか買う人がいるのか、というのが最初の感想。
軽くジャケットに目を落とすと、私でも知ってるアニメの絵がずらりと並んでいた。
「あの、これ……は……?」
「いつでも構わない!貸すから!むしろ献上するから!」
「け、献上!?」
「昼放送で、このBGMの素晴らしさを布教して欲しい!」
「布教……」
次から次へと出てくる、耳馴染みのない言葉の数々に、眩暈がしそうになった。
ちらと時計を見ると、あと30秒くらいで放送部に行かないといけない。
今から全速力で走ればギリ、か。
「ごめん、話は後で!」
「期待してる!!!」
期待なんかしないでくれ。
と心の中で呟きながら、置き場に困ったCDをそのまま抱えながら私は走った。
この時間帯には、すでにチラホラと玄関前のスペースには人が集まり始めていた。
購買用のワゴンが出ていたのも理由の1つだろう。
あちこちから、生徒が集まり始めていた。
やばい。
急がなきゃ。
と焦ってしまった時だった。
足を絡ませて転んでしまった。
CDは地べたに叩きつけられるように転がっていき、私は足首に痛みが走った。
しまった……。
CDはさあっと廊下の向こう側に流れていく。
押し付けられたとはいえ、借り物だ。
立ち上がりたいのに、足が痛くて立ち上がれない。
仕方がない……。
「誰か……!とってください……!!」
と私が叫んだ瞬間、誰かの足にCDがぶつかり、動きを止めた。
助かった、と思ったのも束の間。
お礼を言おうと思って顔を上げると
「大丈夫か?琴莉」
なん……で……。
そのCDを拾ったのは金髪のアイツだった。
そんなアイツが、私に今手を差し伸べている。
何この展開。
少女漫画のベタな展開より、ずっとタチが悪い。
昼休みに入ってすぐ、放送室に行くために教室を出ようとしたら、そんなに仲良くなかったクラスの子から声をかけられた。
「ねえねえ、佐川さん」
「何?」
「あのさ、昼の放送なんだけど……誰が曲、決めてるの?」
文句でもあるのだろうか……と少し怖くなったけれど、どうせ放送室を覗かれると私が機材を触っているのはバレてしまうので、素直に
「私……だけど……」
と返事をして、返事を待った。
早く行きたいなぁ……解放されたいなぁ……と思いながら。
すると、いきなり私の手をクラスメイトは両手で握りしめてきた。
かと思うと
「もうね、すっごい曲選び、天才かって」
「へ?」
「控えめに言って、エモい」
「え、えも……?」
「最初昼の放送聴いた時から、ピンっと来たんよ。流す順番、タイミング、そして音楽を切るタイミング……どこのプロ連れてきてるんだって」
「ぷ、プロでは……」
「ウチの部活でも今の放送話題になってるんよー」
「え?え?」
「3月までは、適当に選んだっぽい曲を、適当なタイミングで流す、超ど素人の放送だったのに、4月から垢抜けたって先輩たちも喜んでたんよ」
「は、はぁ……」
「あ、ちなみに、それでお願いなんだけどさ」
そういうと、その子は大量のCDを私に押し付けてきた。
今時、こんなCDなんか買う人がいるのか、というのが最初の感想。
軽くジャケットに目を落とすと、私でも知ってるアニメの絵がずらりと並んでいた。
「あの、これ……は……?」
「いつでも構わない!貸すから!むしろ献上するから!」
「け、献上!?」
「昼放送で、このBGMの素晴らしさを布教して欲しい!」
「布教……」
次から次へと出てくる、耳馴染みのない言葉の数々に、眩暈がしそうになった。
ちらと時計を見ると、あと30秒くらいで放送部に行かないといけない。
今から全速力で走ればギリ、か。
「ごめん、話は後で!」
「期待してる!!!」
期待なんかしないでくれ。
と心の中で呟きながら、置き場に困ったCDをそのまま抱えながら私は走った。
この時間帯には、すでにチラホラと玄関前のスペースには人が集まり始めていた。
購買用のワゴンが出ていたのも理由の1つだろう。
あちこちから、生徒が集まり始めていた。
やばい。
急がなきゃ。
と焦ってしまった時だった。
足を絡ませて転んでしまった。
CDは地べたに叩きつけられるように転がっていき、私は足首に痛みが走った。
しまった……。
CDはさあっと廊下の向こう側に流れていく。
押し付けられたとはいえ、借り物だ。
立ち上がりたいのに、足が痛くて立ち上がれない。
仕方がない……。
「誰か……!とってください……!!」
と私が叫んだ瞬間、誰かの足にCDがぶつかり、動きを止めた。
助かった、と思ったのも束の間。
お礼を言おうと思って顔を上げると
「大丈夫か?琴莉」
なん……で……。
そのCDを拾ったのは金髪のアイツだった。
そんなアイツが、私に今手を差し伸べている。
何この展開。
少女漫画のベタな展開より、ずっとタチが悪い。