私の教室から放送室までは一本道。

1階の東の端にある放送室から、職員室を通り過ぎ、玄関前に広がるスペースをまっすぐ突き進むと、1年生の教室がずらりと並んでいる。

だから、初めてとは言え、行く時は楽だった。

授業終わってすぐということもあり、玄関前に人がほとんどいなかったから、道が分かりやすかったというのもあったのだが。

問題はその帰り。

私は知らなかった。

その玄関前のスペースが、お昼休みには売店のようなものができたりと、学校中の生徒が集まりやすい場所であるということを。


スペースの中心では、明らかにスクールカーストの上位集団とわかる、華やかな集団がたむろっていた。

その光景に私は見覚えがある。

嫌な予感しかなかった。


そしてそういうものは、必ず当たるのだと……私はもう知っている。



「ナオくん!」

「ナオトー!!!」

「ねえねえ、今日こそ私とデートしようよ」

「やだ、私の方が先なのよ!」



鶏の鳴き声よりずっと耳障りな、甲高い雌の声。

その合間から聞こえてくるのは



「ったく……どいつもこいつも、しょうがねえな……」



ずっと昔から知っている声。


決して、さっきまでいた人たちのような、トレーニングをされた、届けるための声ではないけれど。


「1人ずつ、順番な」


そう言って、女の子たちの頭に軽く頭をぽんぽんと叩きながら、私の方を見る金髪の男……アイツと、私は目が合ってしまった。




どうして。

なんで、こんなところにいるの?

なんで、あなたのそんな姿を、私に見せるの?

見せびらかすの?

楽しいはずの気持ちが、一気にどん底まで落とされた気がした。