言われた通り、その日のお昼休みに放送室に行った。
「お、来た来た」
朝に声をかけてきた人とは違う、女の人が私の姿を見てすぐ手招きをした。
この人も、吹き替えの映画から聞こえて来そうな、澄んだ綺麗な声をしていた。
そして、たぬき顔の美女だった。
テレビでよく見かけるアナウンサーってこんな感じの人が多いな……と瞬時に思った。
「待ってたよーめっちゃ待ってた!!」
「え?」
「よかったー!1年生来てくれないと、廃部になっちゃうところだったから、超助かったー」
「え?え?」
何の話だろう?
「本当に、ほんっとうに、ありがとう!!!ええと……何ちゃん?」
「あ……佐川……琴莉……です」
私が名乗ると、その女の人がぱあっと華やいだ笑顔を見せてくれた。
「え、ことりちゃんって言うの!?放送部にピッタリね」
そう言った女の人は
「私、田村唯、待ってたんだよ〜!」
と言うと、私の手をいきなり掴んできた。
その力強さのせいだろうか。
この瞬間、過去の記憶が瞬時に蘇ってきた。
たくさんの女子たちに囲まれ、腕を引っ張られ、地面に叩きつけられ、踏み付けにされたあの日々。
その記憶を振り払うように
「やめてください!!」
と掴まれた手を振り払ってしまった。
「きゃっ!」
と、まるでアニメのヒロインのような悲鳴に我に返った。
「す、すみません……」
どうしよう。
私、怒られる?
怒鳴られる?
また、あの怖い日々に戻るの?
そんなことを考えていると
「まあ……ここはそういう子もいるよね」
どういう意味だろう、と思って顔を上げた時だった。
いきなりむぎゅうっと、田村さんが私を抱きしめてきた。
「っ!!!??」
「よしよし、辛かったね」
な、何なんだ!?
私はどうして、この美女に抱きしめられてるんだ。
「大丈夫。ここには、琴莉ちゃんにこわーいことをするような人はいないからね」
どうして私は、頭を撫でられながら慰められているんだろう。
どうしてこの人は、私が怖い思いをしたことがあると、知っているんだろう。
いろいろな疑問が頭の中で踊り始めた時だった。
聞いたことがある声が、部屋の奥から飛んできた。
「おい、田村!貴重な新入生を怯えさせるな」
「え、怯えてる!?ご、ごめん!」
パッと、田村さんが私の体から離れる。
花の香りがふわっと鼻に入って来たのと同時に、朝自分を勧誘してきた人の姿も見えた。
「ほら、びびってるじゃん」
「だって立川先輩ー。こんな可愛い子が来てくれるなんて、嬉しくて嬉しくて」
「頼むから、その癖は廃部の危機がなくなるまではやめてくれ」
ため息混じりで、その人は田村さんの横に立ち、私に手を差し伸べてきた。
「僕は立川樹。放送部の部長をしている。来てくれてありがとう」
「はあ……」
私が、その手を取るのを躊躇っていると、立川さんは手を引っ込めながら
「早速だけど、君に合いそうな仕事があるんだけど、やってみない」
と言いながら、私を部屋の奥に行くようにジェスチャーをした。
「お、来た来た」
朝に声をかけてきた人とは違う、女の人が私の姿を見てすぐ手招きをした。
この人も、吹き替えの映画から聞こえて来そうな、澄んだ綺麗な声をしていた。
そして、たぬき顔の美女だった。
テレビでよく見かけるアナウンサーってこんな感じの人が多いな……と瞬時に思った。
「待ってたよーめっちゃ待ってた!!」
「え?」
「よかったー!1年生来てくれないと、廃部になっちゃうところだったから、超助かったー」
「え?え?」
何の話だろう?
「本当に、ほんっとうに、ありがとう!!!ええと……何ちゃん?」
「あ……佐川……琴莉……です」
私が名乗ると、その女の人がぱあっと華やいだ笑顔を見せてくれた。
「え、ことりちゃんって言うの!?放送部にピッタリね」
そう言った女の人は
「私、田村唯、待ってたんだよ〜!」
と言うと、私の手をいきなり掴んできた。
その力強さのせいだろうか。
この瞬間、過去の記憶が瞬時に蘇ってきた。
たくさんの女子たちに囲まれ、腕を引っ張られ、地面に叩きつけられ、踏み付けにされたあの日々。
その記憶を振り払うように
「やめてください!!」
と掴まれた手を振り払ってしまった。
「きゃっ!」
と、まるでアニメのヒロインのような悲鳴に我に返った。
「す、すみません……」
どうしよう。
私、怒られる?
怒鳴られる?
また、あの怖い日々に戻るの?
そんなことを考えていると
「まあ……ここはそういう子もいるよね」
どういう意味だろう、と思って顔を上げた時だった。
いきなりむぎゅうっと、田村さんが私を抱きしめてきた。
「っ!!!??」
「よしよし、辛かったね」
な、何なんだ!?
私はどうして、この美女に抱きしめられてるんだ。
「大丈夫。ここには、琴莉ちゃんにこわーいことをするような人はいないからね」
どうして私は、頭を撫でられながら慰められているんだろう。
どうしてこの人は、私が怖い思いをしたことがあると、知っているんだろう。
いろいろな疑問が頭の中で踊り始めた時だった。
聞いたことがある声が、部屋の奥から飛んできた。
「おい、田村!貴重な新入生を怯えさせるな」
「え、怯えてる!?ご、ごめん!」
パッと、田村さんが私の体から離れる。
花の香りがふわっと鼻に入って来たのと同時に、朝自分を勧誘してきた人の姿も見えた。
「ほら、びびってるじゃん」
「だって立川先輩ー。こんな可愛い子が来てくれるなんて、嬉しくて嬉しくて」
「頼むから、その癖は廃部の危機がなくなるまではやめてくれ」
ため息混じりで、その人は田村さんの横に立ち、私に手を差し伸べてきた。
「僕は立川樹。放送部の部長をしている。来てくれてありがとう」
「はあ……」
私が、その手を取るのを躊躇っていると、立川さんは手を引っ込めながら
「早速だけど、君に合いそうな仕事があるんだけど、やってみない」
と言いながら、私を部屋の奥に行くようにジェスチャーをした。