「どうして……」

「琴莉ちゃんは、何も言ってくれないらしいんだけど……もしかすると、イジメに遭ってたかもしれないんですって」



琴莉が……イジメに?



「どういうことだよ」

「佐川さんが言うには……学校に通えなくなる前に、身体中傷だらけになっていたり、体操着や教科書がボロボロになっていたり……怪しいことが多かったらしいわ」



……何で。

……どうして。

俺は、ここにいるのに。



それから、母親はたった今仕入れたという情報を、俺に教えてくれた。

琴莉がイジメに遭っていると気づいた琴莉の両親は、学校や教育委員会にも訴えたけれども


「調査はしたけどイジメはなかった」


と言う回答しか返ってこなかったらしい。


「佐川さんは納得できなくて、再調査を依頼したらしいんだけど……琴莉ちゃんが嫌がったらしいわ」

「嫌がった?何で」

「それが、分からないんですって。でも、それからほとんど家から出られなくなったみたい……」


俺は、次から次に出てくる事実に対して、何を話せばいいのか分からなくなってしまった。

俺の戸惑いの表情を、別の意味に解釈したのだろう。

母親は心配そうに


「あなたは大丈夫?」


と聞いてきた。


「何が?」

「こっちも、何かとそういうこと、あるでしょう?」

「…………」