アイツは、私より半年先に生まれていて、偶然隣の家だった。

彼は12月生まれで、私は6月生まれ。

だから学年は、アイツの方が1個上。

親同士はとても仲が良く、物心着いた頃からいつも隣にいたので、私はアイツのことを「お兄ちゃん」と呼んでいた。

ツヤツヤの黒髪に、リスのような大きい目。ミルクのような白い肌にバラ色の唇をしたアイツは、女の私よりずっと可愛くて、よく女の子に間違えられていた。


「かわいいね」


アイツがそうやって、大人に褒められるを横で見るたびに、恥ずかしがるアイツの代わりに私が


「羨ましいでしょう?」


と誇らしげに言っていた。

それくらい、アイツは私の自慢の幼馴染だった。

いつまでも、私がアイツの1番近くにいるのだと考えていた。


それが違うと知ったのは、アイツが先にランドセルを背負い始めてから。


「ナオちゃんばっかりズルい!」


と大泣きしながら、アイツが小学校に行くのを見送っていた。

それでも、この時の私はまだ能天気にもこう考えていた。

自分も小学校に入れば、またアイツの1番側にいられるだろう、と。