それからすぐ、俺はアメリカへ行った。

家族に連れられて。

琴莉には何の弁解もできないまま。

アメリカでの生活は、正直言えばとてもキツかった。

言葉は通じない。

文化は分からない。

俺が知っている常識が通じない。

辛かった。

乗り越えられるか不安だった。

分からないことが多すぎる。

でも1番辛かったのは、最後の琴莉の顔を思い出す時。

どうして、あんな顔をさせてしまったのかと、毎晩俺は悔しくて眠れなかった。



眠れない夜の中で、必死にその顔を忘れようとした結果、皮肉にも日常会話レベルの英語はマスターすることができた。

そのおかげで、友達はできた。

新しいことも覚えた。

彼らは俺に、自分で選ぶことの楽しさを教えてくれた。

ヤンチャをする面白さを教えてくれた。


世界が変わった気がした。

女子たちの動きを気にしなくてもよかった。

俺の行動1つでは、決して誰かが傷つくことはなかった。

日本にいる時よりも、自由だと思った。


だからこそ思ってしまう。

どうしてここに、琴莉はいないんだろう。