琴莉……どこだ……!?



俺は、急いで周りを見渡す。

琴莉は、まだ琴莉だけが通っている小学校に続く曲がり角を、ちょうどう曲がったところだった。



逃がさない……!!



俺は走った。

だけど、学校の授業以外で、こんなに全速力で走ったことはなかったから、すぐに息があがってしまう。

必死に走っても、琴莉に追いつかない。



昔は、そんなことなかったのに……!



琴莉が逃げても、俺がちょっと走れば、すぐにこの手に琴莉をおさめることができたのに。

今の琴莉は、俺と同じ速度か……それ以上の速度で俺から離れようとしている。

その事実が、余計に俺の胸を苦しくさせる。



「琴莉!!!」


俺は、琴莉の後ろ姿をどうにか見つける事ができてからすぐ、叫んだ。


止まれ。

止まってくれ。

こっちを見てくれ。


そんな願いを込めながら。



「琴莉!待てよ!!」



待ってくれよ、琴莉……!!

俺だよ。

お前を追いかけているのは、お前をいじめていた女子たちじゃない。

だから、逃げないでくれよ。




叶ったと思った。

琴莉と、ちゃんと話したいという、俺の願いが。

琴莉が、足を止めて、俺を見てくれたから。

だけど、遠目からでも分かった。




「何でついてくるの!?」




琴莉が、俺を睨みつけているのが。