「ナオくんー!今日ひまぁ?」


うるさいな……。


「ナオくん、数学、教えて欲しいなぁ〜?」


うるさい……うるさい……!



何度も、叫びそうになった。

でも俺はその度に、琴莉の笑顔を思い浮かべる。

この笑顔を守るには、俺がこうするしかないのだと、自分に言い聞かせるように。

そして、俺は顔を作る。

顔は区別がつかず、名前も分からない女子たちのために。


「何だよ、お前ら……しょうがねえな……」


俺は、まとめて女子たちの肩を抱いてやる。


「きゃー!!」


そうすると、女子たちは俺のことばかり見るようになるから。


「ナオくん!!私にもして」

「私にも!私にも!!」

「ずるい、こっちも!」


ピーピーうるさい女子たちだが、1人ずつ俺はちゃんと平等に


「ほら、これでいいか?」


と、接してやる。

ちょっと頭を撫でてやるだけで、こいつらを操るのは簡単。

特定の女子だけには決してしない、が重要。

皆、平等に。

求められたら返すだけ。

それだけで、俺の周りは平和になった。

誰も、傷つくことはなくなった。

傷つけられることも、なくなった。



だから、やっと俺は……やっと手に入れることができたと思った。

琴莉に俺が近づいても、琴莉が誰かから傷つけられることもない方法を。




そう、思ったのに……。