そいつに

「やめろ」

と言うだけで済むならよかった。

監視するだけで済むなら、まだ楽だった。

実際、しばらくはそうした。

だから、そいつと俺はしばらくずっと2人でいることも多かった。

すべては、そいつから琴莉を守るため。

琴莉にそいつが何かをしかける気配はなかったから、これが正解だと思っていたのに。

今度は、そいつが傷だらけで教室に現れた。


「どうしたのか?」


俺が理由を聞いても、何も答えてくれないどころか



「2度と話しかけないで」


と、その日から避けられるようになった。


一体何が起きたと言うのか。


別に……そいつから絶交宣言をされたところで、さほど痛くも痒くもない。

むしろ、そいつが俺から離れることで、そいつが琴莉に攻撃する危険性もなくなったわけだから、また堂々と琴莉に会いに行けると一瞬だけ喜んだ。


そして、ふと気づいた。



気になったのだ。

同じだったから。

琴莉が、俺の元から離れた時と。