「……は?」

「嘘だと思うなら、琴莉ちゃんに聞いてみましょうか?」


そいつは、俺の返事を待たずに、琴莉にまた近づこうとした。


「おい!……」


俺は、そいつの手首を掴もうとしたが、するりと、そいつは抜けていった。


「琴莉ちゃん」


そいつが話しかける。
まるで、俺に自分の方が親しげだと、言いたげに。


「何?」


琴莉が、そいつを見る。

ほら、見ろよ。

不思議そうな顔をしてるじゃないか。

俺が話しかける時よりずっと、鈍い反応だ。

そう思っていたのに。


「琴莉ちゃん。昨日のアレ、やばくなかった?」

「わかるー!!!エモい!!」



……何でだよ……。

どうしてだよ!?

俺には、そんな風に、歯が見えるほど大口開けて笑った顔なんか見せたことないのに。

そいつにはそんな顔、見せるのかよ。