予感はあった。

毎日登校は一緒にしていたから。

あんなに俺と学校に行くのを楽しそうにしていたのに、日に日に暗い顔になっていく。

何かあったのだろうか、と気にはなっていた。

だから1度だけ


「琴ちゃん、何かあったの?」


と聞いた。

すると琴莉は


「なんでもないよ!」


と可愛い笑顔で言ってくれるから、俺はそれを信じてしまった。

だけど、毎日一緒に登校する、のルーチンがある日急に変わってしまった。

琴莉が、学校へ行けなくなったと、琴莉の母親に教えてもらった。

理由が分からないと琴莉の母親がいうので、俺が探してくると宣言してきた。

休み時間、ちょっと琴莉の教室に顔を出しただけだったが、すぐに分かった。


「なー今日ニワトリいねえな」

「あいつ、小鳥って名前のくせにうるせえからな」

「静かだなーぎゃはは」


クラスメイトたちが、琴莉の机を蹴り飛ばしながら大笑いしていた。

許せなかった。

俺は、自分の母親との約束を破り、琴莉の世界に介入した。


「お前らふざけんなよ!!!」


2年生の俺が、1年生のあいつらをビービー泣かせるのには十分だった。

俺はこの時、琴莉を守ったヒーローになったつもりでいたんだ。

実際のきっかけが俺だった、なんてことに気づこうともせず。