「何?」

「私、ナオくんの側にいていいの?」

「違う。琴莉」

「何が違うの?」

「俺がいたいんだよ。琴莉の側に」

「でも私……変なんだよ」

「何が?」


変、の意味はわかっている。

ダメすぎる俺に、色々な人が教えてくれたから。

でも俺は、あえて琴莉の声を聞きたい。


「頭ぼんやりするし」

「うん」

「ずっと耳が変なの」

「うん」

「それに……忘れることも多くて……」

「うん…………」

「私、前の私じゃない。ナオくんと一緒にいた頃の私と違うんだよ」


俺は、どういう言葉が琴莉の不安を解消させられるのかを知らない。

それくらい、ずっとずっと離れてた。

だけど知らなくても。

想いを伝えることはできるから。


「琴莉。俺はいろんなものが変わったんだろ?お前が不安になるくらい」

「ナオくん……?」

「それでも、お前への想いだけは、変わらなかったんだ」


たった1つだけ。

俺が琴莉を諦めてあげれば、きっと俺も琴莉もこの先楽だったかもと、1度は考えた。

でも、そのたった1つが、何より嫌だった。

それ以外はどんなに変わったとしても、この想いは変わることはない。



「俺を信じてくれ、とは言わない」


言う資格なんかない。


「それでも、お前が信じても良いと思えるように、俺はもっと強くなるし、もっと変わる。ちゃんとお前のことを守れるようになるから……だから……」


琴莉の目から、次から次へと大粒の涙が溢れていた。

その涙を、今度は指じゃなくて唇で拭った。



「もう、俺から離れるな。琴莉」



琴莉が、微かに頷いたのを確認してから、俺は琴莉の唇にそっと自分の唇を重ねた。

琴莉は、俺の唇を受け止めてくれた。

初めてのキスの味は、ポテチよりずっとしょっぱかった。