琴莉は、俺の言葉を聞いた瞬間、顔を上げた。

目にいっぱい涙を浮かべていた。


「ど、どういう……」


琴莉の唇は、まだ震えていた。


「そういう意味だよ」


俺は、親指で琴莉の涙を拭った。



「お前は、許してくれるか?」

「許す……?」

「俺が、ずっとお前の側にいること」



琴莉は、目を丸くしたまま動かなくなった。

まるで、フリーズしたかのように。


「こ、琴莉?」


俺は、琴莉の反応の意味がわからず、戸惑った。


「琴莉?何か、言ってくれないか?」


本当は、答えを聞くのが怖い。

でも、俺は決めていたのだ。

琴莉が言うことは全て受け入れる。

まずはそれからだと、確かに教わったから。

だから、急かさなかった。

琴莉が、俺を見ながら考えている言葉を。

じっと待つ。

それができなければ、これから先一緒に歩いていくことができないだろうから。

自分の心臓の音が、どくんどくんと病室に響いている。

こんなにはっきり、自分の心音を聞いたことはない。

心臓が、はち切れそうに痛くなってきた。

でも、俺は耐える。耐えてみせる。


「ナオくん……」


琴莉が、小さく掠れた声で俺の名前を呼んだ。