「琴莉……ごめんな」

「え?」

「俺、琴莉の気持ちを考えずに自分の気持ちばかり優先してた」


何?

この人は、何の話をしているの?


「俺がアメリカに行く前のこと、覚えてるか?」


私は首を横に振った。

何を意味しているか、分からなかったから。


「そっか……覚えてないんだ……そっか……」


彼の表情はとても悲しそうな顔をしていたけど、口元は少し笑ってた。


「琴莉、俺さ……お前に嫌われたかと思ってた」

「嫌い?」


私が、誰を?


「でも、俺はさ……だとしても、逃げちゃいけなかったんだ」


何?

一体何の話をしているの?


「琴莉。俺は……」


彼は、私をより強く抱きしめてくる。


「く、苦しい……」

「ご、ごめん……」


そう言った彼は、ほんの少しだけ力を緩めてくれた。

けれど私は彼の腕に閉じ込められたまま。

それから彼は、私の肩に自分の額をあてた。

懐かしい匂いがした。


「琴莉……俺……ちゃんとお前を守りたかったんだ」

「…………え?」

「俺は、あの日から変わりたかった。お前に嫌われないために。……嫌われてももう1度振り向いてもらえるように」


そう言うと、彼は私と目が合うように、少しだけ体を離した。

それから、しばらく私を見ていた。

私も、彼の目を見ていた。

綺麗なビー玉のように、キラキラと光っていた。

しばらくして。

彼は深呼吸をしてから……。


「琴莉、お前が好きだよ。誰よりも」