琴莉は、今病室で眠っているらしい

鎮静剤を打ったらしい。

何の夢を見ているのかも分からないほど、深く深く、眠ってるとのこと。

俺はそんな琴莉の様子を、ロビーで聞いた。

琴莉の父親から。


「こうして話をするのは、琴莉の事故以来だな」

「……はい……」

「正直に言えば、ああいう風に君に言えば、君はもう琴莉には近づかないでいてくれると、思っていたんだがな……」


そう言うと、琴莉の父親は俺の横に座り、俺の肩を叩いた。

ぽんっと、その手は優しかった。


「知っていたよ。君が琴莉に会いに来てくれていたのは」

「……ですよね」

「最初は、どうすればやめさせられるんだろうと考えていたんだがな……」


分かっていた。

覚悟はしていたじゃないか。

俺に、彼らの言葉で傷つく資格はないじゃないか。

その中で、受け入れてもらわないといけないのだから。

そうやって、俺は必死に自分を鼓舞した。

けれど、その次に琴莉の父親から言われたことは、俺の予想とは違っていた。


「だが……琴莉はそうではなかったらしい」

「どういうこと……ですか?」

「琴莉が目覚める前も、目覚めた後も……君が来てくれた後は穏やかな表情をしていたそうだ」

「……それ……は……」

「君も知っているだろう?琴莉の徘徊の話を」

「……はい……」

「どうもあれは……君を探していたみたいなんだよ。波音君」

「俺を……探してた?」

「琴莉の父親としては、色々な意味で複雑だがな……」


それから、琴莉の父親が話してくれたこと。

看護師さん達が琴莉の寝言で聞いていた名前や、琴莉が文字のトレーニングで書こうとしていた名前も、全部俺の名前だったこと。

顔でロックが解除できる琴莉のスマホで確認できたのが、俺の声が聞きたいと書いてある日記のようなメモ。

そして、琴莉の自殺未遂というのは……琴莉が窓の外から飛び降りようとしたという内容だった。

俺を探すために。


「まあ、これまでの琴莉をずっと見てきた、看護師さん達の仮説とも言ってはいたんだが……けれど……きっと合ってるんだろうな……このスマホを見る限りは」




そういうと、琴莉の父親は俺に琴莉のスマホの中身を見せてくれた。

震える手で受け取ったそこに書いてあったのは……。