アイツは、どんどん変わっていってしまう。
私を置いていってしまう。

アイツは、どんどん魅力的になっていってしまう。
私以外の女の子を虜にしてしまう。

分かってる。
アイツは、もう私の手には届かない存在になっていることは。

昨日も、アイツが他の女の子と駅前で歩いているのを見かけた。
その女の子は、読者モデルとして人気だと、クラスメイト達が教えてくれた。
聞きたくもないのに。

いっそ、私の目が見えなかったら良かったのに。
そうすれば、アイツを見る度に、こんな苦しい思いをしなくていいのに。

私には、アイツがくれた言葉だけでいい。
声だけでいい。
それさえあれば、私は苦しくない。


いっそ嫌いになれたらとも思ったのに、考えれば考えるほど、アイツの声が甦る。

「琴莉」

と私に呼びかける、あの日のアイツの声が聞こえる。


この気持ちが、恋と言うのなら。
まだ私はやっぱり、好きなのだろう。
アイツのことが。

だから、私は……。