正直に言えば、苦しかった。

でもそれは、俺がそういう言葉を浴びせられることじゃない。

琴莉に、そういう言葉を言わせた自分の不甲斐なさに、押しつぶされそうだった。


「どうだ、ナオ。答えは出そうか?」

「答え?」

「ああ。それでも、耐えられるかどうか」

「…………それ……は…………」


答えられない。

耐えられる、と言いたい。

言いたい、けれど。

榎本の時のことを、俺は思い出した。

榎本は、俺を責めて責めて、責め立てた。

その時、俺はどうした……?

何を……した……?




「い、……痛い!!!」

「お前のせいだ!お前の!!」

「離して!!誰か!!誰か!!!!!助けて!!!!」

「琴莉に謝れよ!!!」

「痛い痛い痛いー!!!」




そうだ。

俺は、怒りに任せて攻撃をした。

琴莉を殺したのはお前のせいだ、と、俺は本気で思ったのだ。

殺しても良いと、思ったのだ。

だから、榎本を何度も壁にぶつけたではないか。



俺は、そう言うことをする人間なのだと、初めて知った。

今思い返してみて、その事実を酷く恐れた。

もし同じことを琴莉がしてきたら。

琴莉に俺は、榎本と同じことをするのか?

いや。

仮にしなかったとしても。

俺はこう思うかもしれない。




お前が事故に遭わなければ。

俺は、こんな思いをしなくて済んだのに。




その可能性が一瞬でも頭をよぎり、吐き気がした。

その時、バシバシと、背中を何度も叩かれた。

「ナオ……大丈夫か?」

「え?」

「俺の話、聞いてたか?」

「……いや……」


ケビンは、大きくため息をつきながら、今度はコーラを渡してきた。


「ほら、飲めよ」


いつの間にか、喉がカラカラに乾いていたのだろう。

俺は何も考えず、水分を欲した。

だから、手にして疑いもなく蓋を開けた。


ぷしゅーっと、水飛沫が顔中にかかった。


「なっ……!?」

「ははは!引っかかったな」


ケビンは、ケラケラ笑った。


「目が覚めたかよ」

「……ああ。十分すぎるほど」


口を開けると、コーラの雫が口に入ってきた。

炭酸の刺激と砂糖の甘さも、俺を現実の世界に引き戻した。


「じゃあ、ナオがこっちの世界に戻ってきたところで……もう1ついくぞ」

「もう1つ?」

「そう。1個だけイメージしても、わからないだろ?だから今のイメージと真逆を想像するのさ」

「真逆……?」

「バードちゃんと、死ぬまで2度と会えない未来さ」

「っ!?」