「俺を、琴莉が責める?」

「そうだ。考えてもみろ。バードちゃんが事故に遭ったのは、お前に告白するためだったんだろ?」

「あ……」


その通りだ。

琴莉がもしも、あの日俺に告白しようとしなければ。

あの場所を選ばなければ。

俺が、スマホを教室に置きっぱなしにしなければ。

LINEの着信を消されていなければ。

……いや。違う。

問題は、もっと前からあった。

それよりも、俺がもっと前に琴莉に近づいていれば。

ちゃんと好きだって言えていたら。

そもそも起きない事故だった。

バレンタインのあの日、あの場所、あの時間まで琴莉がいなければ。

そうだ。

やっぱり全部、俺が悪い。

そして、琴莉はいつか気づくだろう。

いや、もしかしたら気づいているかもしれない。

俺さえいなければ。

自分が事故に遭わなくて済んだ、と。


「ナオ、大丈夫か?」

「え?」

「顔色、すごく悪いぞ」

「……大丈夫だ、続けてくれ」

「いいんだな?」

「ああ」

「じゃあ……続けるぞ。バードちゃんは、特に音楽が好きだったんだろ?」

「ああ」

「自分が好きなものを奪われたんだろ?事故で……つまり、ナオにだ」

「俺が、琴莉の世界から、琴莉が好きな音楽を奪った」

「そしてこう言われるんだ。ナオさえいなければ、私は大好きな音楽を聴き続けられたのにって」

「…………俺がいなければ……」

「そうだ。ナオが、バードちゃんにもし毎日言われたらどうする?ナオのせいで私はダメになったって」


ケビンは、容赦無く俺の心を抉ってきた。

可能性が限りなく高い、近い未来の琴莉のイメージと共に。


「さあナオ。お前は耐えられるか?もうやめたいって、逃げ出したくならないか?」