「俺は、どう振る舞うべきだったのだ?」


俺はもう、自分で答えを出す勇気がなくなっていた。

これ以上俺自身が選択をしていくと、もう取り返しが……今度こそきかなくなるんじゃないかと、怖かった。

いや。

もうすでに、取り返しがきかなくなっていて、それに俺が気がついていないだけかもしれない。


「なあケビン。俺、どうしたら……」


その言葉を発した時だった。

特に塩味のおにぎりを食べているわけではないのに。

口にしょっぱさを感じた。

ケビンは「しょうがないな」と言いたげな顔で、自分のハンカチを渡してきた。

すでに使用済みだと分かる、よれよれの。


「…………なんだよ、これ」

「鼻水、ふけよ」


その言葉で気づいた。

俺は、涙どころか、鼻水もとめどなく流し続けていたことに。


「ハンカチだぞ」

「どうせ洗うだろ?ティッシュは勿体無いじゃん」

「…………ありがと」


俺は、とりあえず受け取って思いっきり鼻をかんでやった。

頭ツーンと痛くなった。

けど、同時に頭が冴えた気も、なんとなくした。


「なあ、ナオ。そのままハンカチ持っとけよ」

「何でだよ」

「俺はこの後、お前を泣かせるかもしれないからな」

「どう言う意味だよ」


すでに、ケビンには泣かされている。

これ以上、どう俺を泣かせにくるのか。

でも、ケビンは有言実行の男。

行動力の塊の男。

そうしないと、ここまで生き抜いてこられなかったから。


「何、ちょっとした思考実験さ」

「思考実験?」

「そう……。バードちゃんが、ナオ……お前を毎日責めながら泣く……そんな場面からスタートするのさ」