「お前、すごいな……」


俺は素直に感心した。


「おい、お前本当にどうしたんだ?そんな質問すら、今までしてこなかっただろう。ほら、飲めよ、グリーンティー。おにぎりもあるぞ」

「それ、俺が買ったもんじゃねえか」

「細かいことは気にすんなよ」


そう言いながら、ケビンは、今度はコンビニのチキンにかぶりついた」


「うわー!日本のチキンもうめーなー!フライドチキンはアメリカの方が勝てると思ったのに……」

「あのさ……ケビン」

「ん?」


ケビンは、咀嚼していた肉を飲み込んでから、食べていたチキンを持ったまま俺を見た。


「もし、もしもお前だったらの話を聞きたいんだけど……」


そう、俺は前置きをしてから、俺と琴莉の話をした。

ケビンと別れてから、琴莉と再会するまで。

琴莉と再会してから、琴莉が事故に遭うまで。

そして、琴莉が事故にあってから今まで。

1年ちょっとのことをケビンに説明するのに、どれくらいの時間がかかったのかは分からない。

でも、その間、ケビンは真剣に俺を見つめていた。

そして、最後に琴莉が抱えるであろう障害のこと、看護師の高森さんが言った「人に興味をもっと持て」と言われたことまで話した。

どれだけの間、ちゃんと呼吸ができていなかったのだろうか。

全てを話し終えてから、俺は急に頭が痛くなった。

息が苦しくなった。


「おい!ちゃんと深呼吸しろ!」


とケビンに言われて、話してる間呼吸を無意識に止めていたことを知った。

何回か深呼吸をすることで、体に酸素を取り戻すことができた。

その間、ケビンは一緒に深呼吸の真似事をしてくれた。

頼もしい、と思った。

こいつの気遣いは本当にすごいと思った。

でも、どうしてここまで人の気持ちに寄り添えるんだろう、とも思った。


だから、聞きたかった。


こいつだったら、どうするのか、を。



「状況は、何となくだけどイメージはできた」


ケビンは、決して、分かったとも言わなかった。

そして、こう呟いた。


「あのさ、ナオ。俺を頼ってくれてありがたいとも思うんだけどさ……俺がどうしたいかじゃなくて、ナオはどうしたいか、じゃないのか?」